まばたきまたたき (2018- )
まぶたがゆっくりひらいてゆっくりとじる。
一度のまばたきが一生の時間なのかもしれない。
そのまたたきのような一瞬を生きながら
何度まばたきしてきただろう。
よぎった景色やかたちを
どれだけ写してきただろう。
いくつかが目の奥で反芻され
なんでもないかたちが色濃く浮かび上がる。
版づくりと刷りの行為を繰り返し
現象をとどめようとする。
かたちを刻み積み重ね
思いがけない変容と出会う時、
目の奥から離れないそれが
現れてくるのかもしれない。
土からうまれる (2007-2015)
土、そこにいる小さな虫、そして根をはる植物たち。
土に触れる手のひらから伝わるのは、その温かさと
そこから生まれ、はぐくまれ、やがて朽ちる
いのちのサイクルや息づかい。
粘土をこねるように版に向かう。
幾度も向き合い様々に痕跡を刻む。
土のように豊かになるように。
紙に刷り取られた版の表情は、
時に私の意思や作為を超えて
自然の中で生み出されたいのちのうごめきのように見える。
刷り取る行為にそのような瞬間を求め、
版での表現をつづけている。